居酒屋が好きだ。酒自体も好きだが、自宅での独り呑みは殆どしないので、やはり居酒屋の雰囲気が好きなのだ。一週間、試写だVVだMAだと目一杯働いた週末の夜、行きつけの店で黒ホッピーやレモンハイをぐびくび呑む時ほど、「生きていて良かった」と思える瞬間はない。この一杯のための人生だ、それほどの至福がそこにある。
とはいえ、居酒屋ならなんでも良いというものでもない。私なりの「良き居酒屋5か条」は、下記の通り。
以上の5か条が当てはまる店なら例外なく「名店」であり、その街の「人気店」なので、「創業ン十年」という老舗であることも多い。例えば、赤羽の「まるます家」、浜松町の「秋田屋」、蒲田の「鳥万」、木場の「河本」など、いつ行っても期待を裏切られることがない。
そんな名店の中でも、私が特に愛してやまない店、それが葛飾・金町の「ブウちゃん」である。創業からモツ焼き一筋50余年、店主が2代目から3代目に交代しつつある現在も、変わりなく下町の人々に親しまれ続けている。モツ焼き全品80円、チューハイ290円という破格の安さ。定員25人のカウンターはいつも満員だが、椅子は全て繋がった長椅子なので、詰めれば一人や二人は必ず入れてもらえる。店内に2台あるハイビジョンTVは、いつも野球やサッカー中継を映しているから、日本シリーズやW杯の時には「スポーツ居酒屋」となって大いに盛り上がる。あまりに居心地が良いので、会社のスタッフを連れて行ったことも数知れず、この店で生まれた恋もあったりするくらいだ。
それにしても、なぜ「ブウちゃん」に、そして「居酒屋」に、これほどまでに惹かれるのだろう? いささか強引に言えば、それは居酒屋が世間を映す鏡だからではないか。ただ疲れを癒されるだけでなく、現在の社会の空気を肌で感じ、新たな刺激を得られる場所、それが居酒屋なのだ。テレビ番組制作者という職業にとって、時代の風を敏感に捉えられることが何よりも大切な資質の一つであることは間違いない。
だからこそ私は、「単なる呑んだくれ」や「ただの寂しがり屋」などという誹謗中傷にメゲることなく、今日もまた居酒屋に通い続けるのである。