檀 乃歩也

PROFILE

檀 乃歩也(だん のぶや)

檀 乃歩也(だん のぶや)/企画・構成

出身地
東京都
入社
1999年
主な番組
  • NHK ザ・ヒューマン「さらば友よ 作詞家・橋本淳 作曲家・筒美京平」
  • NHK「ファイトロード」シリーズ
  • NHK BS1スペシャル「もうひとつのショパンコンクール」
  • BS12「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」
  • 映画「春の画 SHUNGA」
最近見たおもしろい番組
  • NHK「支配される教室 ある体験授業の記録」
趣味
  • 温泉トレッキング
  • エマニエル夫人研究
  • 個人記念館めぐり

このところ、僕らの業界は「コンプラ」とか名乗るトンチキな妖怪がいつの間にか居座って、なんだかとても息苦しいのです。
「テレビって最近つまんないよね。」ハイ、おっしゃる通り、中の人みんなそう思ってます。
思い返せば、僕らの子どもの頃のテレビって、なんだかもっといかがわしくて、危険な魅力にあふれたワクワクすることがいっぱいの宝箱でした。
とりわけ僕が夢中になっていたのは、心霊写真やオカルト、未知の珍獣や古代文明の謎、歴史的事件の裏側に隠された陰謀といった、プロ野球やボクシングが早く終わった時に、穴埋めに流れる、まぁ、なんともうさんくさい番組。中には、人民寺院の集団自決やケネディ暗殺の決定的瞬間なんて、コンプラなんて、なにそれ?美味しいんですか?って時代だったからこそ流せたヤバいものもありました。

川口浩探検隊シリーズなんてのもありました。俳優の川口浩さん率いるあやしい探検隊が世界中の秘境辺境に猛獣、UMA、謎の少数民族を求めさすらう、というアドベンチャー巨編です。アマゾンの源流地帯でピラニアに指を噛まれて負傷した川口さんは、ライオンに指を食いちぎられたムツゴロウさん、「ライオンの餌」の異名を持つ松島トモ子さんと並ぶ子供たちのヒーローで、川口浩と植村直己ではどっちが凄いのか、週一の学活でカンカンガクガク、熱い議論が交わされるほどでありました。無論、子供たちもそこまでノーテンキじゃありません。番組に充満する怪しさをそれとなく感じながら、その奥底にあるかもしれない1%にも満たない真実に目を輝かせるという、制作者と視聴者、お互いに暗黙の了解があるから成り立つ、そんな縁日の屋台みたいなゲームに魅了されていたのです。
でも、気がつけば、そんな不謹慎で野蛮極まりない代物はテレビからすっかり駆逐されてしまいました。流れるのは幾重ものファクトチェックやコンプラチェックを通過して、すっかり毒気が抜けてカラカラになった無味無臭の出涸らしばかり。あの、キラキラしてたワクワクドキドキの宝箱はいつの間にか、薄っぺらくて、奥行きの無い透明なガラスの板に変わってしまったのです。

実はワタクシ、ドキュメンタリージャパンという会社に籍をおいてますが、そもそもドキュメンタリーらしいドキュメンタリーなんて、実はそんなに作っておりません。時折交わされる、ドキュメンタリーとはなにか?的議論の場でも、なにそれ?美味しいの?と返してヒンシュクを買うような門外漢であります。そんな僕ですが、ここ数年熱中しているのが「幽霊」や「都市伝説」「歴史ミステリー」「秘境アドベンチャー」といった、昔懐かしいアナクロな番組作りです。「業界怪談」「ホラー短歌の世界へようこそ」「四人のモナリザ」「北斎ミステリー」「発掘ロストワールド」「西島秀俊×黄金伝説」などなど、振り返るとどれもこれも、テレビがまだいかがわしかった時代の面影のある番組ばかり。それは絶滅寸前の恐竜のように、いずれ近いうちにこの世から消えてしまう類いのものです。それなのに、いまだにそんな「今どきじゃない」番組ばかりなのはなぜなのか、自分自身でもよくはわかりません。ただ、あの頃それが心底から面白かった、ときめいて仕方なかったものだったからなのでしょうか。
いつかこの世から「あの頃」のテレビが消滅し、三途の川を渡るとき、僕はきっとその場所にいるでしょう。川の向こう側、ニヤニヤと笑いながら、こっちにおいでと手招きする妖怪となって。でももしもその時、「コンプラ」なんて奴が間違ってノコノコやってきやがったなら・・・問答無用で地獄に送ってやりますからね(ニヤリ)。